システム開発製造業(金属加工・切削加工)公開

発注書が届いた瞬間に、設計からNC出力まで走る。フライス盤とAIエージェントを接続した事例

工場内で設備データを確認する担当者のイメージ
※ 掲載写真は支援内容・活用場面を伝えるためのイメージです。実際の導入先・現場を撮影したものではありません。

概要

受注のたびに、担当者が発注書を読み、CADで図面に起こし、CAMで加工パスを作り、NCコードをフライス盤へ流す——この一連の工程が特定の人にしか回せない状態でした。発注書の受信をトリガーに、AIエージェントが仕様を構造化し、社内の形状テンプレートに当てて3Dモデルを生成、加工パスとNCコードまで作り、人は最終承認だけを行う仕組みを構築。繰り返し性の高い部品について、受注から加工開始までの間にあった「人が図面に起こす」工程をなくしました。

この事例の要点

  • 発注書(PDF・メール添付)の受信をトリガーに、品番・材質・寸法・数量・納期を構造化して抽出する
  • 抽出した寸法を社内の形状テンプレートに当ててパラメトリックに3Dモデルを生成し、CAMで加工パスとNCコードまで出力する
  • 全自動にはせず、切削条件と最終NCコードの承認という人の判断を1箇所だけ残した
  • 適用範囲を「繰り返し性の高い部品」に限定し、非定型品は従来どおり設計者が担当する設計にした
  • 抽出結果は項目単位で過去実績と突き合わせ、公差から外れた場合は自動で停止して人に回す

案件の概要

業種
製造業(金属加工・切削加工)
規模
従業員数十名規模の工場
ご支援内容
AIエージェント設計・受託開発・現場運用の設計
対象業務
受注処理/設計/CAM/NCデータ作成
適用範囲
繰り返し性の高い部品(標準品・リピート品)

主な技術

  • Claude(AIエージェント)
  • Python
  • CAD/CAM連携
  • PostgreSQL
  • 社内ネットワーク内で運用

相談時の状況

最初にうかがったのは「受注が増えると、加工より前で詰まる」という話でした。機械の稼働率が上限なのではなく、機械に流すデータを用意する工程が上限になっている、という状態です。

工程を分解すると、受注から加工開始までにこれだけの手作業が挟まっていました。

  1. 発注書がメール添付のPDFやFAXで届く
  2. 担当者が読み取り、品番・材質・寸法・数量・納期を基幹側へ転記する
  3. 図面がない、あるいは寸法だけの指示の場合はCADで形状を起こす
  4. CAMで加工パスを設定し、切削条件を決める
  5. NCコードを出力し、フライス盤へ転送する

問題は工程の多さそのものより、2〜5をひととおり回せる人が限られていたことでした。受注が重なるとその人の前に列ができ、逆にその人が休むと工場全体が止まりかねない。作業自体は毎回ほとんど同じなのに、属人的なまま残っていました。

つくったもの

発注書の受信をトリガーに、AIエージェントが次の順で処理を進め、最後に人が承認するとフライス盤へデータが渡る仕組みです。

工程担当内容
① 受信・仕分けシステム発注書メールを検知し、取引先と帳票様式を判定する
② 仕様の構造化AIエージェント品番・材質・寸法・数量・納期・支給/手配区分を項目に分解して抽出する
③ 照合システム過去の受注実績・形状テンプレートと突き合わせ、既存品か新規品かを判定する
④ モデル生成AIエージェント抽出した寸法をテンプレートのパラメータに当てて3Dモデルを生成する
⑤ 加工パス生成AIエージェント工具・切削条件を過去実績から引き当て、CAMで加工パスとNCコードを出力する
⑥ 承認切削条件と最終NCコードを画面上で確認し、承認する
⑦ 転送システム承認済みNCデータをフライス盤へ渡す
③で新規品と判定された場合、④以降には進まず設計者へ回ります。

見た目には「発注書が来たら勝手に加工データができている」ですが、実装として重要なのは②③と⑥です。

② 仕様の構造化 — 文章ではなく項目で受け取る

発注書の様式は取引先ごとに違い、同じ取引先でも担当者によって書き方が揺れます。ここをAIエージェントに任せるにあたって、出力を自由な文章にせず、あらかじめ決めた項目の集合として返させる設計にしました。値が読み取れない項目は推測させず、空のまま「未確定」として返します。

AIが最も危険なのは、分からない値をそれらしく埋めてしまうことです。材質や公差を推測で埋められると、そのまま金属を削ってしまいます。「埋めない」ことを正解として設計しました。

③ 照合 — 過去実績を正解データとして使う

工場には、その工場でしか通用しない暗黙のルールがあります。この材質ならこの工具、この寸法帯ならこの取り代、この取引先の図面はこの解釈。これらを仕様書に書き起こすのは現実的ではないので、過去の受注と実際に流したNCデータを引き当て元にしました。

その結果、抽出した仕様が過去実績のどれにも当てはまらない、あるいは寸法が過去の範囲から外れている場合は、自動的に処理を止めて設計者に回るようになっています。判断できないときに止まることが、この仕組みの品質そのものです。

⑥ 承認 — 人が止める場所を1箇所だけ残す

工程ごとに人が確認する設計にすると、結局これまでと同じだけ時間がかかります。かといって全自動にすると、誰も内容を見ないまま主軸が回ることになる。切削は物理的に取り返しがつかない加工なので、そこは避けました。

そこで、確認を最後の1箇所に集約しました。承認画面には、生成された3Dモデル、加工パス、切削条件、そして「過去のどの実績を引き当てたか」「過去NCコードとの差分」が並びます。担当者は一から図面を起こすのではなく、出てきたものが妥当かを見る側に回ります。

作業の性質が「作る」から「見る」に変わるため、確認の負荷そのものも下がります。ゼロから図面を起こす判断と、出てきたものが過去実績と整合しているかを見る判断では、必要な集中の度合いが違います。

安全側に倒すために決めたこと

  • 承認のないNCコードは機械に届かない。 転送はシステムが行いますが、承認フラグのないデータは物理的に転送対象にしていません。
  • 新規形状には適用しない。 形状テンプレートに当てられない受注は最初から対象外にし、設計者へ回します。
  • ドライランを前提にする。 初回ロットは必ず空運転と初品検査を通す運用のまま変えていません。自動化したのはデータを作るところまでです。
  • すべての生成物に履歴を残す。 どの発注書から、どの実績を引き当てて、誰がいつ承認したかを追えるようにしました。不具合が出たときに原因を戻せることを優先しています。
  • 社内ネットワーク内で完結させる。 図面・加工条件は工場の競争力そのものなので、扱う範囲と保存先を最初に線引きしました。

結果

繰り返し性の高い部品について、受注から加工開始までの間にあった「人が発注書を読み、図面に起こし、加工パスを作る」という工程がなくなりました。担当者の作業は、出てきたものを承認する操作に変わっています。

副次的な変化として、これまで一人に集中していた工程が画面上で共有されるようになり、その人が不在でも受注処理が止まらなくなりました。設計者は、自動化の対象外にした非定型品や新規形状に時間を使えるようになっています。

同じ構成が向いている工場

  • 受注の多くが、過去にも作ったことのある形状の寸法違い・数量違いである
  • 発注書からNCデータまでを回せる人が1〜2人に限られている
  • 機械の稼働率より、機械に流すデータの準備が先に詰まっている
  • 過去のNCデータと受注履歴が、探せば出てくる状態で残っている

逆に、毎回まったく異なる一品ものが中心の工場では、引き当て元になる実績が貯まらないため、この構成の効果は限定的です。その場合は、発注書の読み取りと基幹への転記までを切り出す方が現実的です。詳しくはシステム・ソフトウェア開発をご覧ください。

よくあるご質問

使っているフライス盤やCAD/CAMを入れ替える必要はありますか。
基本的にはそのまま使います。この事例でも、機械と既存のCAD/CAM環境は変えていません。既存環境から加工パスとNCコードを出力できる経路を確保し、その前段にAIエージェントを置く構成にしています。まず現状の設備と出力形式をうかがったうえで、接続方法を設計します。
AIが間違った寸法で加工してしまうことはありませんか。
そこを起こさないための設計が中心です。読み取れない値は推測させずに空欄として返し、過去実績の範囲から外れた場合は自動で処理を停止して人に回します。さらに、承認されていないNCコードは機械へ転送しない仕組みにしており、初回ロットの空運転と初品検査も従来どおり残しています。
図面がなく、寸法だけの発注にも対応できますか。
この事例はまさにその状況が前提でした。社内の形状テンプレートを用意し、抽出した寸法をパラメータとして当てることで3Dモデルを生成しています。ただしテンプレートに当てはまらない新規形状は対象外とし、設計者へ回す設計にしています。
図面や加工条件を外部に出さずに導入できますか。
できます。この事例では、扱うデータの範囲と保存先を最初に線引きし、社内ネットワーク内で完結する構成にしました。取り扱いの制約は工場ごとに異なるため、要件定義の最初に確認しています。
どこから始めればよいですか。
まず、過去1年分程度の受注データを見せていただき、繰り返し性の高い部品がどれだけあるかを確認するところから始めます。ここが薄いと投資に見合わないため、対象範囲の見極めを最初に行います。ご相談は無料です。

「機械より前の工程」で詰まっているなら、一度ご相談ください。

受注データを拝見して、どの範囲が自動化の対象になり、どの工程が減るのかを具体的にご提示します。実現できない範囲もその場でお伝えします。初回のご相談は無料です。

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